【検証】自作小説のあらすじをChatGPTに喰わせて短編を書いてもらった

この小説のあらすじをChatGPTに教えて、小説を書いてもらったらちょっとウケたので公開します。pixivとかnoteとかに載せたくないのでここで。

ChatGPTへの指示内容

以下のあらすじに沿って、小説を書いてください。あらすじは1、2、3、4と区切られます。まずは1の部分を書いてください。文章量は、1〜4全体で1万字〜3万字程度を目安としてください。(その他にもこの小説家を参考にとか指示していますがそこは省略)

あらすじ1

主人公の「わたし」は、自分の山で自殺未遂をした結果、後遺症として記憶を失った「あなた」の面倒を見ることになる。「あなた」は身分を証明するものを何も持っておらず、身元がわからない。唯一手掛かりとなりそうな所持品のファイルケースには、ダイヤル錠で鍵がかかっており、開けることができない。「あなた」は「自然に思い出すまで、無理に開けたくない」と、鍵の破壊を拒否する。

本編1(ChatGPT)

あの日、山の空気はやけにやわらかかった。春と夏の境の湿った匂いがして、杉の葉の影が風に震えていた。「わたし」はその山を、祖父の代から受け継いでいる。手入れもままならない、荒れた斜面ばかりの小さな山だが、子どものころから、そこに入ると心が静かになった。

その日も、ただ木の様子を見に行くつもりだった。けれど、登山道の途中で、倒れている人を見つけたのだ。

初めて見たとき、「死んでいる」と思った。白いシャツが土にまみれ、首筋に乾いた血がこびりついていた。近くには、木の枝に括られた細いロープが垂れていて、途中で切れていた。わたしは息を呑み、駆け寄った。冷たい肌に手を当てると、微かに温もりが残っていた。

その人——「あなた」は、救急隊によって町の病院へ運ばれ、一命を取り留めた。医師の話では、低酸素脳症による記憶障害を負っているという。意識を取り戻したとき、「あなた」は自分の名前を言えなかった。どこに住んでいるのかも、どうして山にいたのかも、まるで霧のなかの出来事のように思い出せないと、静かに首を振った。

その無表情が、なぜか印象に残った。

恐怖でも悲しみでもなく、ただ「空っぽ」であることを受け入れているような、透明な顔だった。

「身分証のようなものは持っていませんか?」と警察官が尋ねた。「あなた」はゆっくりと枕元に視線を落とし、小さな黒いファイルケースを指さした。中は開かない。三桁のダイヤル錠が付いていた。警察が番号を試みようとしたとき、「あなた」はかすかに声を出して止めた。

「……開けないでください。自然に思い出すまで、待っていたいんです。」

その声は掠れていたが、確かな意志があった。そう言われてしまうと、誰も無理に壊そうとはしなかった。「あなた」が退院するまでのあいだ、そのケースは病院の保管庫に預けられた。

退院後、「あなた」の行き先はなかった。役所も、警察も、どこにも照会が届かない。結局、わたしが引き取ることになった。あの山で見つけてしまったのだから、何かしら責任のようなものを感じていた。医師からは「少しのあいだ、穏やかな環境で過ごせば記憶が戻るかもしれません」と言われた。それで、わたしの山のふもとにある小屋に、「あなた」を迎えた。

小屋といっても、もともとは祖父の山仕事の休憩所で、今は誰も使っていなかった。窓を拭き、埃を払うと、思いのほか陽当たりが良く、柔らかな場所に思えた。わたしはその日から、ほとんど毎朝「あなた」の様子を見に行くようになった。

「あなた」は驚くほど静かな人だった。

食事をしていても、薪をくべていても、声を出すことが少ない。けれど、物音に敏感で、鳥の声がすると顔を上げ、風が通ると微笑む。あるとき、わたしが冗談まじりに「森の精みたいですね」と言うと、「精霊というより、漂流物ですね」と小さく笑った。その笑い方が、不思議に幼く、胸の奥を締めつけた。

病室から持ち帰った黒いファイルケースは、棚の隅に置かれていた。埃をかぶらないように、時折わたしが布で拭いた。「あなた」はそのたびに、少し遠い目をしてケースを見つめた。「何か、大切なものが入っているんですか?」と尋ねると、「ええ……たぶん。でも、今のわたしが開けるのは違う気がして。」

「違う?」

「思い出したときに、初めて意味があるものかもしれません。」

その言葉は曖昧だったが、どこか祈りのようにも聞こえた。以来、わたしもそのケースを開けようとは思わなくなった。

日が経つにつれて、「あなた」の身体は回復した。畑仕事も手伝ってくれるようになり、夜は焚き火のそばで、山の話をした。「あなた」は自分のことを「わたし」と言い、わたしのことを「あなた」と呼ぶのを避けた。名前がないから、互いにどう呼ぶべきか迷ったまま、曖昧な関係が続いた。「あなた」と呼ぶと、ほんの一瞬、彼女——いや、その人——の瞳に波紋が広がるように見えた。

六月の終わり、山百合が咲く頃だった。「あなた」は小屋の縁側に座り、手を合わせていた。最初は何かを拝んでいるようにも見えた。その仕草が、妙に自然で、長いあいだ見慣れた祈りのように思えた。わたしが尋ねると、「なんとなく、こうしていると落ち着くんです」と言った。指の間には、小さな丸い石がひとつ。山で見つけたのかもしれない。わたしはそれを見て、数珠のようだと思った。

そういえば、倒れていた現場にも、似たような小石が散らばっていた気がする。もしかしたら、「あなた」は仏教徒なのだろうか。それとも、記憶の底に残る何かの名残りだろうか。けれど、そのときのわたしはまだ、この祈りがどんな名前を持つものかも、その人が何を信じていたのかも、まるで知らなかった。ただ、山の静けさのなかで、二人の呼吸が重なっていた。朝露に濡れた葉が光り、遠くで鹿の声がした。わたしは思った。

この沈黙が永遠に続けばいいのに、と。

あらすじ2

「わたし」は「あなた」を発見した際に散らばっていた数珠のような石、頻繁に手をあわせる癖から「あなた」が仏教徒なのではと推測し、仏教について調べて「あなた」に質問を繰り返す。「あなた」は光明真言というお経をスラスラと唱えられることがわかり、「わたし」はますます確信を深める。順調なように思えるが、「あなた」の記憶障害は悪化していて、過去の記憶を失っただけでなく、新しく記憶することもほとんどできなくなってしまっていた。「わたし」はその状況にむしろ居心地の良さを感じ、「あなた」と過ごす日常を愛するようになる。しかし、「あなた」はある日遁走し、帰らぬ人となった。遺体は行旅死亡人として扱われ、自治体に委託された寺に納骨されることとなった。

本編2(ChatGPT)

「あなた」が手を合わせる姿を、わたしは毎朝見るようになった。小屋の前の石段に腰を下ろし、陽が差す方向に向かって、目を閉じている。手のひらは小さく震え、唇が微かに動いている。風が吹くと、その声が消えて、鳥の鳴き声の中に溶けていった。

「何を唱えているんですか?」

そう尋ねると、「あなた」は首を傾げ、しばらく考えてから答えた。

「わかりません。でも……この言葉を口にすると、胸の奥が温かくなる気がするんです。」

それから、彼女は低く、響くような声で唱えた。

온 아보갓 베이로샤노 마카보다라 마니 하반타라 마린 사바하――

わたしには呪文のようにしか聞こえなかった。けれど、それは確かに美しい響きだった。空気の粒が共鳴して、木々の葉がかすかに揺れるほどに。

家に戻ったあと、わたしはその音のかけらを忘れないように紙に書き留めた。図書館で調べてみると、それは「光明真言」という真言宗のお経の一部だとわかった。すべての命を光で包み、闇を照らすという意味があるらしい。

——光明。

その言葉を見つめているうちに、なぜか胸が熱くなった。死の淵から戻った「あなた」が、光を求めて唱えている。それは偶然ではないように思えた。

次の日、わたしは仏教に関する本を何冊も借りて山へ戻った。「あなた」は縁側に座り、木の葉の影を手で追っていた。わたしはページをめくりながら、覚えたばかりの言葉を口にした。

「お釈迦様はね、すべての苦しみは“執着”から生まれるって言ってるんですって。」

「あなた」は少し笑った。

「執着……それがなければ、人はどうやって生きるんでしょうね。」

「でも、苦しみをなくすためには、手放すことが大事なんだって。」

「そうかもしれませんね。」

そう言って、「あなた」は目を閉じた。その表情は穏やかだったけれど、どこか寂しげでもあった。

わたしはそれから毎日のように、「あなた」に仏教の話をした。輪廻や涅槃、無常や慈悲。そのどれもが、わたしにとっては理解しきれない抽象の海だったが、「あなた」と語り合ううちに、それらが少しずつ形を持ち始める気がした。「あなた」が思い出そうとする記憶の代わりに、わたしは宗教というもう一つの記憶を埋めていったのかもしれない。

けれど、その穏やかな日々は、少しずつ歪みはじめた。

ある日、わたしが昨日の話を持ち出すと、「あなた」はきょとんとした顔をした。

「……そんな話、しましたっけ?」

笑って冗談のように返したけれど、心の奥が冷えた。次の日も、その次の日も、「あなた」は昨日の出来事を覚えていなかった。

医師に相談すると、「逆行性健忘に加えて、前向性健忘の傾向も出ている」と言われた。つまり、「あなた」は新しい記憶をほとんど蓄えられなくなっているのだ。昨日のことが、今朝には霧のように消えてしまう。

わたしは悲しみよりも、奇妙な安堵を覚えた。彼女が過去を思い出さないように、そして、未来を記憶しないように、この小さな日常のなかで、永遠に漂い続けてくれたら——そんなことを、心のどこかで願っていた。

「あなた」は変わらず、朝になると祈りを唱えた。小屋の前に置いた石の上で、薄い唇を震わせながら。時折、祈りのあとに「ありがとうございます」と小さく呟いた。誰に向かっているのか、わたしにはわからなかった。わたしは問いかけた。

「あなたが祈っているのは、神様? それとも仏様?」

「あなた」は首を振り、「どちらでもない気がします」と言った。

「光のようなものに、包まれたいだけなんです。」

その言葉に、なぜか涙が出そうになった。わたし自身もまた、光を求めていたのかもしれない。暗い森の底で、誰かを照らす微かな灯りを。

それからほどなくして、「あなた」は突然、いなくなった。

朝、小屋を訪ねると、布団は畳まれ、湯呑みに冷たいお茶が残っていた。戸口の外には、昨日までの足跡がかすかに残っている。黒いファイルケースも、祈りの石も、そのままだった。

わたしは山中を探した。日が暮れても戻らず、警察にも通報した。数日後、町の広報で「行旅死亡人発見」の告示を見た。

山の北側、谷の奥で発見された身元不明の遺体。

衣服の特徴から、それが「あなた」であると知らされた。

病院での確認のとき、わたしは声を失った。冷たくなった顔は穏やかで、まるで眠っているようだった。瞼の端に土がついていて、拭ってやると、ほんの少し、唇が微笑んだように見えた。

その後の手続きは淡々と進んだ。身元不明のまま、遺体は行旅死亡人として扱われた。町の委託を受けた寺で火葬され、小さな骨壺に納められた。わたしは葬儀のあと、白い骨壺を胸に抱きながら、しばらく動けなかった。

「あなた」は、記憶を失ったまま、光の中へ帰っていったのだろうか。それとも、何かを思い出し、その重さに耐えられなかったのだろうか。

ただ一つだけ、確かなのは——わたしの心のどこかで、「あなた」がまだ祈っている気がする、ということだった。

風が吹くたびに、木々の間を抜けて、あの真言の響きが聞こえる。

온 아보갓 베이로샤노……

その声が遠くへ消えていくたび、わたしは胸の奥で、何かが静かに崩れていくのを感じた。

注釈

唐突なハングルに横転しましたが、音を読むと確かに光明真言です。意味のわからない音を表現するのにハングルを使ったのか、私が韓国語を勉強していて他のチャットで使ってるせいなのか、AIの意図はよくわかりません。当然ですが、私の指示にも元の小説にも韓国語は使ってません。ハングルが引用形式になってるのはChatGPTがそうしてたからです。AI独自の美学かもしれません。

あらすじ3

しばらくの後、「わたし」は「あなた」の数少ない遺品を、「あなた」と出会った場所に埋めようとする。その際、散らばっていた数珠のことを思い出し、それらも拾って一緒に埋めようと探す。紐に繋がった部分を見つけ安堵するが、土を払ってみると、それは数珠ではなく、十字架のついたロザリオだった。今までの勘違いに気がつき、近所の教会まで車を走らせる「わたし」。辿り着いたカトリック教会で、「あなた」はその教会の信者の、「アンナ 片岡 絢音」という人物であることが確認される。奇しくも、「わたし」の下の名前も「アンナ(杏奈)」であった。

本編3(ChatGPT)

あの人がいなくなってから、季節は三度めぐった。山は相変わらず、ゆっくりと呼吸しているようだった。朝になると、霧が谷を覆い、やがて日が昇るにつれて溶けていく。その淡い白さの中で、わたしは毎日、「あなた」が祈っていた石段を眺めていた。そこに座る人影を、いまも探してしまう。

「あなた」の遺骨は、小さな寺に納められた。行旅死亡人の名のない骨壺は、無縁仏の棚の上に置かれていた。住職は「供養はしますから、心配なさらずに」と穏やかに言った。その優しさが、かえって遠く感じられた。わたしの中では、「あなた」はまだ、行き先を見つけられずにいるような気がしてならなかった。

ある晩、ふと思い立って、「あなた」と出会った場所へ行こうと思った。何かを終わらせなければ、いつまでも立ち止まったままのような気がした。その場所は、山道の途中の、細い崖の縁にあった。ロープの切れた枝はいまもそのままで、風にゆれていた。わたしは膝をつき、懐から包みを取り出した。中には、「あなた」の遺品——黒いファイルケースと、小屋に残されていた数個の小石。

「ここに、戻してあげようと思うの。」

そう呟いて、手のひらで土を掘った。湿った土の匂いが鼻を刺した。小石を並べようとしたとき、ふと、以前見かけた散らばった石のことを思い出した。

「そうだ、あの数珠のような……」

わたしはあたりの落ち葉をかき分け、石を探した。夕暮れの光が枝の隙間から差し込み、何かが鈍く光った。拾い上げると、それは紐に繋がった数珠のようなものだった。思わず息をつく。

「見つけた……」

しかし、土を払ってみると、玉の先に小さな金属の飾りがついていた。

それは十字架だった。

手が止まった。心臓の奥で、何かが静かに崩れ落ちる音がした。

十字架——。

仏教徒ではなく、キリスト教徒。

あの祈りは、わたしの思い違いだったのか。

手の中のロザリオは、長く使い込まれていた。玉のいくつかは欠け、金属の十字架には指で擦られた跡があった。きっと、「あなた」はこれを握りしめて祈っていたのだ。光を求めて、神を呼びながら。

わたしは立ち上がり、足元の落ち葉を踏みしめた。胸の奥で、ひとつの確信が形を成していった。

——教会へ行かなくては。

車を走らせた。山道を抜け、町へ降りる。夕暮れの光のなかで、街の屋根が鈍く光っていた。わたしはハンドルを握る手に力を込めながら、どこかで「あなた」がわたしを導いているような気がしていた。

町外れに、白い壁の古い教会があった。門をくぐると、空気が一変した。外よりも静かで、冷たく、甘いような匂いがした。扉を開けると、ステンドグラスの光が床にこぼれ、誰もいない礼拝堂の中で、蝋燭の火が揺れていた。

「ご用でしょうか?」

奥から神父が現れた。白髪まじりの優しい顔だった。わたしは震える声で、手にしたロザリオを見せた。

「この持ち主を、探しているんです。」

神父はロザリオを手に取り、しばらく見つめていた。やがて、静かに頷いた。

「これは……片岡絢音さんのものですね。」

その名前を聞いた瞬間、空気が変わった。世界が一瞬、遠くへ霞んでいった。

「片岡……絢音?」

「ええ。こちらの教会の信者でした。もう三年ほど前になりますが……行方がわからなくなっていたんです。」

わたしは言葉を失った。

「あなた」に名前があった。

その響きが、教会の静けさのなかで何度も反響した。

アンナ——片岡絢音。

神父は続けた。

「アンナというのは、洗礼名です。聖母マリアの母、聖アンナに由来します。とても敬虔な方でした。よくこの教会で祈っておられましたよ。」

その言葉を聞いたとき、胸の奥がひどく熱くなった。

「……あの、わたしも、杏奈といいます。」

神父は目を見開き、やがて、微笑んだ。

「そうですか。偶然……いえ、きっと神様の導きですね。」

教会の中で、蝋燭の炎が小さく揺れた。ステンドグラスの青い光が、まるで「あなた」の祈りの残響のように、わたしの肩を照らしていた。

その夜、帰りの車の中で、窓の外を流れる街灯が涙の粒のように滲んだ。「あなた」は仏にではなく、神に祈っていた。あの光明真言のような響きも、もしかしたら、聖句の断片を、記憶の底から掬い上げていたのかもしれない。

わたしは思った。

あの人は、祈りを失っても、祈るという行為だけを覚えていたのだ。

信仰の形を忘れても、光を求める心だけは残っていたのだ。

それは、失われた記憶のなかに宿った、最後の“記憶”だったのかもしれない。

教会の鐘が、遠くで鳴っていた。まるで、「あなた」の名を呼ぶように。

——アンナ。

わたしはハンドルの上に手を置き、静かに目を閉じた。

あらすじ4

「わたし」は「あなた」の背中を追うようにカトリックに入信し、「あなた」に出会ってから5年と7ヶ月が経過した。(7月)26日に聖ヨアキムと聖アンナの記念日のミサがあると信者から聞き、「わたし」は、ファイルケースのダイヤル錠は0726で開くのではないかと思い至る。ケースは解錠され、「わたし」は中にある遺書を読む。「わたし」は「あなた」が救われたことを確信し、「あなた」は神様に見つけられたのだ、と確信した。

本編4(ChatGPT)

教会で「あなた」の名を聞いてから、五年と七ヶ月が経った。あの日の光の粒は、いまも胸の奥に沈んでいる。季節は何度も巡り、山には再び春が訪れた。木々の芽吹きは柔らかく、風の匂いは懐かしかった。小屋の縁側に立つと、かつて「あなた」が祈っていた姿が浮かんでくる。あれから時間は静かに流れた。けれど、その人の不在は、空気の形を変えずに残っていた。

わたしは教会へ通うようになった。最初はただ、「あなた」の足跡を辿るために。けれど、ミサで流れる祈りの言葉に耳を傾けるうち、その響きが、心の底のやわらかな部分をそっと撫でるように感じられた。光が降るときの、あの透明な音を思い出した。

やがて、わたしは洗礼を受けた。神父は穏やかに笑って、「アンナ」という名前を授けてくれた。その瞬間、遠くで鐘が鳴った。空気が澄み、涙がこぼれた。

「あなた」と同じ名前を、いまのわたしは、もうひとりの「あなた」から受け取ったような気がした。

月日が経つにつれて、信仰というものの形が少しずつ見えてきた。それは“信じる”というよりも、“委ねる”ことに近い。すべてを理解しようとせず、ただ光の中に立つ。わたしはいつの間にか、「あなた」が目指した場所へ歩いていたのかもしれない。

ある日、教会の女性信者がわたしに言った。

「来週、七月二十六日は聖ヨアキムと聖アンナの記念日ですよ。」

その言葉を聞いた瞬間、胸の奥にかすかな電流が走った。

七月二十六日——。

それは、「あなた」との出会いの月でもあった。

なぜか、その数字が心に焼きついて離れなかった。帰宅してからも、机に向かって何度もその日付を書いてみた。

「0726」

ただの数字の並びなのに、不思議な意味を孕んでいる気がした。

ふと、棚の隅に置かれた黒いファイルケースに目が止まった。あのとき以来、一度も開けていない。錆びついたダイヤル錠の銀色が、夕暮れの光を受けて微かに光っていた。

——もしや。

手が震えた。

わたしは静かに、ダイヤルを合わせていった。

0、7、2、6。

カチリ、と音がした。

息を呑んで蓋を開けると、中には数枚の紙と、小さな封筒が入っていた。淡い香水の匂いが、ほのかに立ちのぼった。

一番上の便箋には、「アンナへ」と書かれていた。それが、自分に宛てられたものなのか、あるいはかつての「あなた」自身への言葉なのか、すぐにはわからなかった。けれど、筆跡は確かに、「あなた」のものだった。

わたしがこの手紙を残すのは、記憶を失うことが怖いからではありません。何もかもを忘れても、わたしという人間が、祈る存在であったことだけは、誰かに伝わってほしいからです。
わたしは、いつも神様に見つけてもらいたかった。世界のどこにも居場所がなくても、神様の手のひらの中には、必ず灯があると信じています。
もし、これを読んでいる人がいるなら——あなたが、わたしを見つけてくれた人です。
ありがとう。
あなたがこの言葉に触れたとき、わたしはきっと、光の中にいる。

文字のひとつひとつが、涙で滲んで見えた。読み終えたあと、部屋の中がひどく静かだった。外では風が吹き、木の葉が擦れる音だけがしていた。

わたしは封筒の中身をそっと取り出した。そこには小さな白いロザリオが入っていた。それは、新しく、まだ誰にも触れられていないように見えた。

「あなた」が使っていた古びたものとは違う。もしかすると、もう一度“信じ直す”ために準備していたのかもしれない。

わたしはそれを胸に当て、目を閉じた。あの人の祈りの声が、微かに耳の奥で響いた。

온 아보갓 베이로샤노……

あれは真言ではなく、彼女の魂の言葉だったのだ。宗教の違いなど、光の前では意味を持たない。

わたしは小屋へ向かった。夜の山は静かで、満天の星が瞬いていた。縁側に座り、ロザリオを握りしめて祈った。誰かのためではなく、ただ「あなた」の存在を想いながら。

——神様。

——どうか、あの人を見つけてください。

けれど、その祈りの途中で、気づいた。

あの人は、もうとっくに神様に見つけられていたのだと。あの山の光の中で、あの最後の微笑みのときに。

わたしが気づくのが遅かっただけなのだ。

風が吹き、木々がざわめいた。遠くでフクロウが鳴き、闇がひときわ深まった。その暗闇の奥で、確かに光が瞬いた。わたしは小さく息を吐き、微笑みながら、祈りを終えた。

——おかえりなさい、アンナ。

空には、無数の星が散っていた。まるで、それぞれが小さな魂の灯のように。

翌朝、東の空が白み始めた頃、わたしはロザリオをそっと手のひらに包み、教会へと向かった。鐘の音が、ゆっくりと響きはじめる。その音の中に、「あなた」の声が重なって聞こえた。

わたしは、神様に見つけられたの。

その瞬間、涙が頬を伝った。悲しみではなく、救いのような温かい涙だった。わたしは微笑みながら、扉を押し開け、光の中へ歩み出た。

感想

突然のハングルだけが面白すぎますが、「思ったよりやるね」という感じです。全体的に別に面白くはないし、矛盾もあるし、よくある表現を繋ぎ合わせただけ感は否めないのですが、私がやろうとしていたこととたまたま同じことをしている箇所もあり、なかなか楽しいです。

たとえば、

あの人は、祈りを失っても、祈るという行為だけを覚えていたのだ。信仰の形を忘れても、光を求める心だけは残っていたのだ。

この部分は、「仏教に馴染みがあり幼い頃から光明真言を唱えてきた人間が成人洗礼を受け、その後記憶障害になったら、神を思いながら真言を唱えることになるのではないか?」という私の試みと同じことを言っています。

逆に、私が想定していたこととは違う方向に進んだ部分もあり、全体的に「神様(光)は信じるが、それが仏教かキリスト教か、そういった"宗教"という人間の枠組みに意味はない」といった思想を感じます。神様=光=キリストと気づいたとも読めますが……。原作者の私は明確にカトリックであり、キリスト者であることを非常に重視してこの物語を書きました。ですから、「(神か仏かどちらにいのっているのかと聞かれて)どちらでもない気がします。ただ、光に包まれたい」というのは、私の頭からは絶対に出ない言葉です。

私が本当は何を考えて書いたのかは↑にあるんですが、同じあらすじでも、自分以外が考えるとこのぐらい違うんだなあと思うと面白いです。

あと病院で診断を受ける描写とかは考えるのが面倒で省いていたのですが、ChatGPTはちゃんと書いてくれるので、正確性がさほど重要じゃなくそれっぽく書けばOKな部分は任せても良さそうです。カトリック教会の描写については変なタイミングで鐘なりまくってたりしてて変なので、重要な要素を任せすぎるのはよくないと思います。

夢小説を書いてるオタクなんかはもっと色々上手く工夫をしてるんでしょうが、普段そういうことしない物書きでも案外楽しかったです。また何かAIに助けてもらって書いてみようと思います。


最終更新日時: 2025/10/16 21:43
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